無料のAI文字起こしアプリ『Group Transcribe』
対面の取材やミーティングの内容をリアルタイムでサクサクと文字起こしできる、iOS対応・完全無料のAI文字起こしアプリを探しているあなたに向けて『Group Transcribe』をレビューします。フリーライターの僕が使ってみて分かったこのアプリの魅力は以下の5つです。
・マイクロソフトブランドの無料アプリ
・閲覧したいファイルをすぐに探すことができる
・MacBookやiPadとかんたんに共有できる
・翻訳アプリとしても使える
できれば修正してほしい点としては
…というところです。
今までにない変換精度と入力スピード
初めて取材で使用したのは、2021年の夏です。いつものようにICレコーダ−で録音し、その隣に『Group Transcribe』を立ち上げたiPhoneを置いて取材を始めたところ、インタビュー相手がiPhoneを指さして言いました。「それ、文字起こしアプリですか?ものすごいスピードですね。私も使ってみたいので、あとでアプリを教えてください」。
取材後、ファイルをチェックした僕は、その精度の高さに驚きました。その場にいた者なら話の内容がほぼ理解できるレベルだったのです。相手が何気なく口にした下関にあるフグ(フク)料理の名店「春帆楼(しゅんぱんろう)」も正確に変換されていました。
2人目の取材では、僕よりずっとガジェットに詳しいディレクターも少し離れた場所で使用。「ちょっと信じられないくらいの精度ですね」と感心していました。
しかし、残念ながら取材時のファイルはお見せできません。取引先と秘密保持契約を締結しているからです。そこで、ここでは短い参考事例をご紹介します。本棚からサマセット・モームの短編小説『月と六ペンス』の冒頭を、インタビューくらいのスピードでさっと読んでみました。
小説の文章
『Group Transcribe』の文字起こし
ICレコーダーの音声をPCで再生し『Group Transcribe』で文字起こし
web取材の際、僕はインタビューを有料のPCソフトで録音しています。その音質はICレコーダーとほぼ同じ。それをスピーカから出力しても、これだけの精度を実現してくれるのですから本当に助かります。
以前から取材音声の文字起こし作業が大嫌いだったライターさんにはこれだけで十分な動機になると思いますが、ベネフィットはまだありますので、できれば最後まで読んでください。
マイクロソフトブランドの無料アプリ
『Group Transcribe』は、マイクロソフトの社内インキュベータープログラムとして2014年に本格的にスタートしたMicrosoft Garageプロジェクトの一つ。最先端の音声・言語技術と独自のマルチデバイス音声入力フォーマットによる高精度の文字起こしサービスを無料で提供してくれていますが、このチームの目標は人々の間に存在する言語的な溝を埋めるAIを、質の高い学習データによって構築することにある、とのこと。僕自身、これまでに取材を通じて多くのITエンジニアから「日本語の音声入力は難しい」という声を聞いてきましたが、これからもさらなる進化が期待できそうです。
閲覧したいファイルをすぐに探すことができる
文字起こしが完了すると、ファイルは日付・時刻順(降順)に保存され、「すべてのトランスクリプト表示」をタップすれば一覧が表示されます。iPhone上でファイル名を変えることはできませんが、後から探すときに困ることはないはずです。
MacBookやiPadとかんたんに共有できる
iOSなので、MacBookやiPadへのファイルのコピー、共有はAirDropでワンタッチ。すぐに清書作業に取りかかれます。WindowsのPCやタブレットで作業する場合はファイルをコピーしてGoogleドキュメントなどに貼り付けて保存するのが早くて確実です。
ファイルをiPhoneから別の場所にコピーすると、段落ごとに発言者(自分の名前)が表示されます。どのテキストアプリにも付いている検索・置換機能を使って名前を「空白」に置換すれば、ファイル上の名前をすべて消すことができます。
翻訳アプリとしても使える
『Group Transcribe』は、80以上の国と地域の言語をサポートしています。めったにないシチュエーションかもしれませんが、取材相手が急遽、日本に来て間もない外国人になったとしても、それぞれのiPhoneにこのアプリをインストールして翻訳すれば意思の疎通をはかることができますよ。
30分で自動的に文字起こしは停止します
『Group Transcribe』はワンセッション30分。開始ボタンを押してから30分が経過すると、自動的に文字起こしを停止します。これは仕様なので現状では設定を変えることはできません。継続する場合は再度、開始ボタンをタップする必要があります。3分前になると「まもなく停止します」とメッセージが表示されますが、僕はこれまでに何度か再スタートを忘れたことがありますので、できればワンセッション60分くらいはほしいところです。
あと、地下など電波状態が悪いところでは正常に動作しません。地上でもまれにエラーが出ることがありますので、取材で使う場合は必ずICレコーダーと併用しましょう。
おわりに
採用にせよIRにせよ、企業取材では文章を作成した後、総務や広報担当の方から「インタビューの内容を確認したい」と言われることがありますので、ざっくりしたものでも文字起こしはやっておいて損はありません。タイピングスピードに自信があるので必要ない、という方もぜひ1度使ってみてほしいです。
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