未経験者歓迎の編集プロダクションや制作会社を探そう
クライアント(出版社、編集者、広告出稿者など)が求める文章を、取材・調査に基づいて作成・提供する個人事業主。それが、僕がイメージするフリーライター像。
そして今、実務経験がゼロの人から「ライターになるにはどうすればいいの?」と聞かれたら、「未経験者歓迎の編集プロダクションや制作会社を探しましょう」と答えます。
こうした会社は、リーマン・ショックに端を発した2008~2009年の急速な景気後退で激減。コロナ・ショックでその数をさらに減らしたと思われますが、優れた経営者がいる会社は規模を縮小しながらも生き残っています。
では、そのなかからどんな会社を選ぶべきでしょうか?
僕が考えるベストチョイスは、
大手出版社やマスメディア企業から、紙・web媒体の取材記事およびタイアップ記事のライティング、デザイン業務を受注している会社です。
各種学校の入学案内や会社案内、カタログ、パンフレット、など、印刷物の製作実績があれば、なおいいと思います。
紙媒体にライティングできる会社がベストな理由
「本が売れない」と言われて久しく、女性ファッションをリードし続けてきた『JJ』が休刊する時代ですから、紙媒体のライティングを受注している会社を探すのは簡単ではないでしょう。
それでも見つけてほしいと願うのは、雑誌や書籍にはwebにはない厳しさがあるからです。
キャッチコピー、リード、本文は、決められた文字数で収めることが例外なく要求され、不足、超過は「素人かよ」と罵られます。編集者に原稿チェックを受ける段階でさえ誤字・脱字は「恥」であり、大手出版社の案件では、その後に校閲が待っています。
校閲とは、誤字・脱字、表記の揺れ、事実関係の誤り、差別表現や不快表現などの不適切表現の有無、論理構成、内容的な矛盾などを、出版社の表記規格に基づいてチェックすること。キャッチコピーや本文はもちろん、写真に合わせた80文字のキャプション、イラストチックな吹き出し台詞にも容赦なくメスが入ります。
現在、僕に仕事を依頼してくれているメディア企業では校閲の対応は制作担当者が一括しておこなうためライターのところへ下りてくることはありませんが、雑誌ライター時代は「喧嘩を売ってんのか」と毎回イラついていました。
そこまで徹底しても人のすることにミスはつきもの。誰も気づかずに印刷物として世に出ることもあり、発覚した瞬間からそれは「事故」として扱われます。
「しかし」が「かかし」になっているくらいなら知らないフリを決め込むこともできますが、人名やwebサイトに誘導するURLが間違っていたらそうはいきません。制作会社やライターは厳重注意を受け、以後の対策強化を求められます。
情報誌が毎号数十万部という勢いで売れていた時代、掲載された電話番号が間違っていたために離島の農家の電話が昼夜を問わず鳴り続け編集長が菓子折を持って詫びに行った、ということもありました。
1つの誤字・脱字が仲間と一緒に積み重ねてきた時間を台無しにするというのはパンフレット、カタログなどの印刷物も同じで、利益が出なくなるほどの値引きをクライアントに要求される場合もあります。
もちろん、webメディアにも表記の基準・規格はあり、段落ごとの文字数が制限されているサイトもありますが、読者、エンドユーザーの手に渡れば回収が不可能な紙媒体と、公開後、誤字脱字や不適切な表現の修正どころかページをまるごと削除することもできるweb媒体。
どちらがライターとしての基盤づくりに適しているかは明白です。どちらの案件も請けている会社なら、未経験の新人はweb媒体からスタートするはず。紙媒体を任せてもらえるようになったら一人前と言えるのではないかと思います。
独学よりも会社で経験を積んだ方がいい
ライターという仕事は、必ずしも下積みを必要としません。リサーチや取材によって情報を集め、クライアントや読者が求めている内容の文章を定められた表記規格や文字数を守り、締め切り日までに作成できるのなら明日からでもライターとして活動できます。
マーケティングやコンサルティング、IT、金融など、実務で培った専門知識を活かすための副業としてライターの仕事を始め、成功している人もいますよね。
それでも僕が編プロや制作会社で経験を積んだ方がいいと思うのは、クリエイターとして生きていくためのスキルを身につけることができるからです。
たとえば、画像や動画の撮影・編集技術、グラフィックデザイン、webデザイン、コーディング、取材・撮影のディレクションなどがそれ。社員10名程度の小規模な会社では業務に関する明確な線引きがなく、ヤル気次第で取材・ライティング以外の仕事も担当できる可能性が高いのです。
参考までに書いておくと、僕は情報誌の編集アルバイト、印刷会社の営業担当などを経て社員5名の編プロに入社。カメラマンの手配が面倒なのでカメラを覚え、自分のスタンスで仕事をするためにディレクターを兼務し、先輩のデザイナーをサポートするためにillustratorやPhotoshopなどの操作をマスターしました。
予算がない時はモデルもやりましたし、自分で請けきれない時は社外のフリーライターへの委託もおこなっていましたので、営業以外は全部経験したと言えますね。
これらの経験・スキルは、フリーランスとなって20年以上経った今も活きています。思い出したくない出来事もたくさんありますが、ムダなことは何ひとつなかったと思います。
社内業務はテレワーク(在宅)、取材や取引先とのやりとりはリモート。今後、クリエイティブワークもその傾向がさらに強くなっていくと想像しますが、働き方が変わっても、コロナ以前のクリエイティブワークを守ろうとする人たちが近くにいる場所でライターの仕事の楽しさ、厳しさを知ってほしいと思います。
これからライターをめざすあなたに、いつか、おなじような気持ちでキャリアを振り返る日が来ることを願ってやみません。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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